とあるスーパーを紹介したい。

「キテネ食品館 月寒店」。

以前、この場所には別のスーパーがあった。私がよく通っていた店だ。
転居してしばらく足が遠のいているあいだに、見慣れた看板は黄緑色に変わっていた。

馴染んだ店が消えたことに胸の奥が小さく沈むのと同時に、居抜きで入ったこの店の力を確かめたくて、車を停めた。

敷地に入ってすぐ。
出入り口前の特売野菜コーナーが、ただ事ではなかった。
水耕みつばが1束50円。手に取った瞬間にシャキっとした鮮度が伝わってくる。
北海道産のにらは1束78円。葉に張りがあって、持ち上げてもしならず、青々としている。今が旬とはいえ、おそろしく新鮮で安い。
かぶは、特大のものが2つ入って1パック158円。
どれも手に取ると鮮度を感じて驚き、値段を二度見してもう一度驚いた。

キテネ食品館 月寒店 入り口前の野菜コーナー(みつば50円・特売)
入り口前の野菜コーナー
キテネ食品館 月寒店 北海道産にら 1束78円
買って帰って刻んだ。これでもかと鮮度を伝えてくるシャキシャキ感と香りだった。
キテネ食品館 月寒店 かぶ 値札
すべてが大ぶりなのでわかりにくいかもしれないが、本当に一個一個が大きい

店内に入ると、妙な熱気がこもっていた。
多数の買い物客が棚を覗き込み、棚の間を縫うようにして、いい品物を探している。
普通のスーパーの静かな回遊とは違う、市場の店先のような空気だ。皆が良いものを目当てに来ているのが、その動きから伝わってくる。

野菜コーナーで度肝を抜かれたが、鮮魚コーナーの品揃えでも、我が目を疑いかけた。
発泡のケースに、殻付きの生うにが2個入って1パック480円。ツブ貝とホッキ貝が各480円、むきホヤが398円、ホタテの貝柱が680円。
そもそも他のスーパーでは手に入りにくいものすら、新鮮かつ手頃な価格で提供されている。

キテネ食品館 月寒店 鮮魚ケース(生うに480円・ツブ・ホッキ)
見誤るかもしれないが、海鮮専門のスーパーではない。これがこの店の日常風景。

惣菜の棚には、ニシンの煮付け、北寄貝のサラダなど。
北海道産の素材を使った総菜が並び、地産地消がそのまま日々の献立の値段で手に入る。

キテネ食品館 月寒店 北寄貝サラダ・ニシン煮付けなどの北海道産惣菜
地産地消を地で行くお惣菜たちに、頬が緩む。

私はその日、にらとかぶとみつばをかごに入れて帰った。
どの野菜も、この野菜はこうあってほしいという、理想のままの鮮度だった。

なぜこの価格で、この鮮度なのか。
キテネ食品館は、青果・鮮魚・精肉・惣菜・グロサリーのテナントが、市場のように一つの店に集まる仕組みをとっている。
それぞれのテナントが独自の仕入れルートを持つため、大手のスーパーでは出しにくい価格と鮮度が同じ売り場に並ぶのだという。

代表の中塚誠さんは、開店にあたって「昭和の時代にあったスーパーの良さを令和の時代につくり出して(中略)毎日顔を出してもらえるスーパーを目指して」と語っている。

あの熱気は、その言葉が売り場の形になったものだったのだと、後で腑に落ちた。

この店が建つのは、かつて何度か名を替えてきた店舗の跡地だという。
私が通っていた店は消えてしまったけれど、その同じ場所に、地域に根ざして廉価多売で踏ん張る店が、また一つ灯った。

「本当は教えたくない」なんて、思ってしまいそうなほど。
けれど、絶対に消えてほしくない。だから皆に伝えたい。
そう感じる店が、また一つ増えた。

このサイトのコンセプトは、「道民の『また行きたい』」を綴ることだ。
勝手ながら、まさにこの場所、と言える店に出会えたことにも、心が弾んだ。

次来たら、何を提げて帰ろうか。
——黄緑の看板の「キテネ」が、また来てね、と言っているようだった。

関連リンク

店名キテネ食品館 月寒店
Webサイトhttps://x.com/kitene1018110
住所〒062-0053 北海道札幌市豊平区月寒東3条4丁目2-6
電話011-598-8921
営業時間月曜日: 定休日
火曜日: 9時30分~20時00分
水曜日: 9時30分~20時00分
木曜日: 9時30分~20時00分
金曜日: 9時30分~20時00分
土曜日: 9時30分~20時00分
日曜日: 9時30分~20時00分
定休日月曜
支払い方法現金のみ